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依存症について
当院では、依存症専門医療機関としてアルコール依存症・ギャンブル等依存症治療プログラムを実施しています。対象は外来患者さんと入院患者さん、頻度は毎週2回(水曜日14:00~15:00、金曜日09:30~11:00)、担当スタッフは医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士、患者さんとスタッフで一緒に机を囲んで語らうミーティング形式を基本としております。
人間とお酒(アルコール)・賭博(ギャンブル)との係わりには深く長い歴史があります。
日本は冠婚葬祭、季節行事や行楽の場面で必ずお酒が振る舞われ、飲酒に対しても寛容な国です。また時代劇でお馴染のサイコロ丁半や花札など、賭博は身近な娯楽として長年行われてきました。現在においても、競馬やパチンコは生活に馴染んだギャンブルの代表です。
ここでは依存症という病気について、そして当院の治療プログラムについてご紹介します。
1.アルコール依存症について
お酒はちょうど良く飲めば、楽しくなる・人間関係を良好に保つなど良い面もたくさんあります。しかし、脳のブレーキが緩んでしまうとお酒がちょうどよく飲めなくなります。これが依存症という病気です。依存症になると、体を壊していても飲む、仕事の最中でも飲む、飲まないとイライラする、飲酒運転や家族とのトラブルをくり返す、自分でも止めたいのに止められない、お酒を飲むことが命よりも大事、といった状態に陥ってしまうのです。これは本人の性格に問題があるとか意志が弱いとかではなく、この病気にかかれば誰もがそうなってしまうのです。
2.ギャンブル症について
日本はパチンコ大国と呼ばれています。ギャンブルもお酒と同じで、ちょうどよく楽しめれば良い面もありますが、依存症になってしまうと悪い面ばかりになります。パチンコのことばかりが気になって仕事中も集中できない、収入を上回るお金を使ってしまう、借金をしてまで賭け続ける、などがギャンブル症の症状です。近年は従来のパチンコ・競馬に加え、ゲーム課金やオンラインカジノといった新しい形のギャンブルも生まれています。ギャンブル症もアルコール依存症と同じく脳のコントロール障害です。
3.治療の考え方について
アルコール依存症もギャンブル症も病院で治療が必要です。放置すればするほど症状は悪化していきます。
ただ、残念ながら依存症に完治はありません。一度緩んでしまった脳のブレーキをまたしめ直すことはできないのです。しかし、この不治の病から回復することは出来ます。
お酒を飲めば止まらなくなる、パチンコを始めたら大金を使ってしまうのなら、そもそも飲まなければいい、やらなければ何も起こらないのです。つまりやめ続けることこそが依存症から回復する方法なのです。
やめ続けているうちにお酒を飲みたい気持ちも弱くなります。ギャンブルをしたい気持ちも弱くなります。そして大切なこととして、依存症は世界保健機構(WHO)が認めた列記とした病気であるということ。病気なので気合や根性では治りません。医師が処方箋に「根性30日分、気合30日分」とは書きませんよね。この2つの言葉で回復はしないのです。
絶対断酒しなければいけないのか、というご質問もよくいただきます。前述したように、多くの場合、依存症から回復するためには飲酒をやめる必要があります。しかしいきなり断酒を決断できる患者さんは少ないです。そのような場合でも、まずは節酒の方法からスタッフと一緒に学んでいく方法があります。
相談に来ていただくだけでも治療の大きな一歩です。自分一人だけで、気合と根性だけで、依存症と闘おうとしないでください。
4.治療法について
安全にお酒をやめていく・やめ続けていくのが依存症の治療です。そのための主な方法としては、医師による精神療法、そして冒頭でご紹介したARP(アディクション・リハビリ・プログラム)があります。ミーティングでは認知行動療法を取り入れたり、依存症を学ぶDVDやオリジナルのテキストを活用したり、テーマを決めて患者さんに体験談を語ってもらったり、依存行動を減らす工夫を話し合ったり、お互いに支え合ってお互いに学び合いながら回復に向けて取り組んでいます。
5.外部とのつながりのサポート
院内のARPだけでなく、町の断酒会やAAに通うことも依存症回復の大きな力になります。依存症治療で入院した患者さんが退院する場合、近隣の断酒会・AAをご紹介し、スタッフが同伴して一緒に通うことで断酒継続のフォローをします(初回は待ち合わせをして一緒に行きます)。
6.ご家族へのサポート
ご家族にはAFP(アディクション・ファミリー・プログラム)という病院主催の家族会を毎週第3木曜日18:30~20:00で開催しています。
自分の伴侶や子供が依存症を患った時、どう接すればいいのか、起きたトラブルにどう向き合えばいいのか、たくさんの悩みで疲れ果てご家族まで病気になってしまうことは珍しくありません。患者さん本人の回復のためには、ご家族自身が回復することが必要になります。
そんなご家族の為にAFPはあります。依存症についての正しい理解、患者さん対応の正しい知識を持ってもらうほか、同じ体験をしたご家族の話を聞き、自らも体験談を話すことがご家族の回復に最も効果的です。患者さん本人のためになるのはもちろんですが、ご家族自身が元気な心でいるためにAFPを活用いただけたらと思います。
7.最後に
依存症は誰でもなる身近な病気です。特別な人だけがなる病気ではありません。
「大丈夫かな?」と思ったらいつでも当院にお問い合わせください。ゆっくりお話を伺わせていただきます。
依存症担当医師 福場 将太
依存症担当医師 清水 敏幸
依存症課担当看護師 課長 今川菜美子
依存症課担当精神保健福祉士主任 長友 勇樹
8.お問い合わせ先
日時: 10:00〜16:00(土・日祝日休み) 電話: 011-384-2100(代表)