コラム

コラム2020年04月「8ページ」

 さて、毎年恒例の航海日誌、江別すずらん病院の8年目を振り返ってみよう。7年目の震災を乗り越え、グループホームの開設や各スタッフの講演活動、各部門のサービス拡大など、三つのサテライトクリニックも含めて勢力的に航海してきた令和元年度であったが、最後に大きな試練と向き合うこととなった。それは言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大である。北海道は知事が日本で最初に緊急事態宣言を発令する未曾有の事態となり、病院もクリニックも診療体制を変更して予防策を講じることとなった。

 本来顔と顔をつき合わせてゆっくり語らうのが心の医療。デイケアや就労体験、外泊訓練なども回復には必要な治療活動。そのいつもどおりが難しくなった時に、どう患者さんの心をケアするか、どう回復を支援するか…情勢を見ながら検討の話し合いがくり返し行なわれた。いや、今もなお行なわれている。これは新年度においてもまだまだ渦中の問題である。

 患者さんだけではない。スタッフだけではない。社会全体が不安と緊張を強めている。理事長は言う、闇雲に恐れるのではなく、まず相手をちゃんと知ってから対策せよと。そして形や世間体ではなく、実質的に有効な対策をせよと。確かに用心はどんなにしてもし過ぎることはないが、冷静さを欠いては逆効果にもなり得る。今こそ医療者の心が試されているのだ。

 そんなわけで今年はあまりのん気なことも書いていられない状況。送別会や歓迎会、準備していた講演会ができないのも今は仕方ない。卒業式に入社式、甲子園にオリンピック、楽しみな予定が次々と変更されて悔し涙を飲んでいる人も多いだろうが、今はそれも致し方ない。人生の大切なチャンスを見送らなければならないことも本当に心苦しいが、必ずまた巡ってくる、機はまた熟すと信じて今は耐えるしかない。

 一年後、今度は明るくこのコラムが書けることを願っている。その時まで、冷静さと思いやりだけは見失わずに職務を果たしたい。

(文:クルー)

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