コラム

コラム2017年06月「まぜごはんの地位が高すぎる」

 今回の記事はあくまでも冗談なのでそのつもりでお楽しみ頂きたい。
 僕は広島県の出身であり東京生活を経て現在北海道に暮らしている。北海道の魅力は数々あるが、その一つはやはり食の豊かさだろう。確かに北海道のごはんはおいしい、これはおおいに認める。僕が未だにこの地にとどまっている重要な理由の一つである。

 手前味噌になってしまうが、当医療法人「風のすずらん会」はごはんをとても大切にしている。江別すずらん病院では入院患者さんのごはんはもちろん、精神科デイケアと認知症デイケアの患者さんの食事も提供。美唄すずらんクリニックでもデイケア患者さんの食事を提供。これに加えて職員の給食まで用意してもらっているのだから、栄養士さんにも調理師さんにも本当に頭が下がる。夜勤スタッフの晩ごはんや朝ごはんまで用意してくれる病院はなかなかない。食堂を供えたクリニックというのもなかなかない。これらは全て食を愛する理事長先生のご意向によるものだ。
 そして何より誇らしいのは、そのごはんがとってもおいしいということ。僕のような独身者からすれば病院で提供してもらう給食は重要な栄養供給源でありライフラインでもある。毎日お昼の時間が楽しみであり、おいしいごはんは疲れも忙しさも忘れさせてくれる。

 そんなわけで当法人のごはんはおいしい。それは間違いない。しかしそれはそれとしてあえて疑問を投げかけてみたい。…まぜごはんの地位が高すぎるのではないか?
 まぜごはん…広島では炊き込みごはんと呼ばれていた一品だ。山の幸や海の幸をふんだんに盛り込んだ和食の定番。確かにおいしい。しかしである。
 ある日こんな光景を見た。病院職員が食堂を訪れ「今日のお昼ごはんは何?」と栄養士さんに質問、栄養士さんは「今日はまぜごはん。ホタテも入ってるよ」と答える。すると職員たちは「やったー!」とハイテンションで大喜び。

 いやいやいやいや、そんなにテンションが上がることなのか?まぜごはんってそんな料理なのか?
 いや、おいしいよ。本当においしいよ。でもテンションは上がらない。例えば親子の会話でも、「今日はカレーよ」→「やったー!」はわかる。「今日はハンバーグよ」→「ひゃっほーい!」もわかる。しかし「今日はまぜごはんよ」で歓声を上げる子供というのは、少なくとも広島や東京では見たことがない。

 これが北海道なのだろうか?親しい同僚にこの話をしたところ平然と「まぜごはんはテンション上がりますよ。うまいじゃないですか」と答えた。炊き込みごはん…もといまぜごはんの地位は道産子にとってはかなりのものらしい。う~ん、不思議だ。「今日の給食はまぜごはん」と聞いて舞い踊る職員たちを見ながら、僕は違和感を拭えないでいる。

 ちなみに同様のことはラーメンについてもあった。ドクターには検食という業務があり、その当番でラーメンを頂いていると、とある職員が「先生はラーメンですか、いいですね」と声をかけてきた。見ると彼の手にしたトレイにはポークチャップ定食。その日の職員給食はポークチャップだったらしい。
 いやいやいやいや、そんなことはないだろう。僕は心の中で叫んだ…「ポークチャップの方がいい!」と。

 まあそんなこんなで当法人のごはんはおいしい。ミシェランの覆面調査員もさすがに病院食堂まではチェックしていないだろう。もし全国の病院食堂に星ランクをつけていく雑誌があれば、当法人は三ツ星を狙えるのではないだろうか。いやむしろうちのごはんを紹介する雑誌を出版してもいいかもしれない。タイトルはもちろん『すずらんガイド』だ。

 まぜごはんに舞い踊る職員たちに若干の違和感を感じながらも、今日もおいしいごはんを頂けることを心から幸せに思う。

(文:福場将太)

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