デイケア活動日誌

2021年04月『心学塾SEASON6始動』

 心の医療は病院によって理念も方法も雰囲気も千差万別。デイケアという治療も、病院によってその様相は大きく異なる。特定のプログラムを設けずのんびり談話したり読書したりする空間としてデイケアルームを開放している病院もあれば、回復のための治療プログラムを積極的に開催している病院もある。そこにはその街のニーズというものも当然反映され、年配の患者さんが多い街では日中を過ごすための居場所のニーズ、若者の患者さんが多い街では進学や就労を目指すステップアップのニーズが多くなる。

 美唄という街も年配の患者さんが多いので、確かに主なニーズは居場所となるのだが、しかし若い患者さんが全くいないわけではないし、学校や仕事がうまくいかなくて悩んでいる患者さんも少なからずいる。そんな患者さんたちの回復には居場所ニーズのデイケアでは役に立てない。
 そこで平成28年に立ち上げたのが『心学塾』という就労支援プログラムである。働きたいけど就職できない、働いているけどうまくいっていない…外来に通うそういった悩みの患者さんたちが集まって共に学び合うミーティングである。

 まずはミーティングという文化が根付くのに時間がかかった。そしてどんな内容にすればいいのかも色々模索した。まだまだ道半ばであるが、それでも気付けば五年が経過し、この春から六年目に突入できたことは感慨深い。そしてここから一般枠雇用、障害者枠雇用、A型就労、B型就労、とそれぞれの道を見つけて就労につながったメンバーが少なからずいることも素直に嬉しい。卒業したメンバーもいれば最初期から参加を続けてくれているメンバー、時々ひょっこり顔を出してくれるメンバー、そして新たなメンバーも加わったりして、今のところ参加者が尽きることなく継続できているのは本当にみんなのおかげである。

 心学塾の特徴としては特定のスタイルにこだわっていないことが挙げられる。時にはいかにも勉強会という厳しい雰囲気の回もあれば、お互いの経験談を語り合う自助グループのような回、SSTやCBT、アサーショントレーニングやアンガーマネジメント、ゲストを招いての講演、職場見学ツアーなどなど、その時のニーズに合わせて、良く言えば臨機応変に、悪く言えば節操なく、色々な要素を盛り込んでいる。
 そして一番の理念は「ここでは全員が生徒で全員が教師」、スタッフも含めお互いから教わるという姿勢だ。働くことの意味、働くために必要なもの…僕自身もここで多くの学びを得た。そしてここで生み出されたアイデア、生み出された言葉たちを、自分が元気に働き続けるためにちゃっかり利用させてもらっている。

 新型コロナウイルスの影響で、これまで当たり前にできていた仕事をやめざるえなくなったり、決まっていたはずの就職が取り消しになったり、今たくさんの人たちが働くことについて考え、向き合っている。
 確かに働くことで病気になる場合もある。しかし働くことで回復していける、元気でいられることの方が圧倒的に多い。
 もし今この文章を読んでいるあなたが、働きたい気持ちはあるのに一歩が出ずにいるのなら、ぜひ相談にきていただきたい。その小さくても大切な心の灯が消えてしまわないうちに、一緒に学び合いましょう。

(文:福場将太)

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