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コラム2023年6月「還ってきた娘」
美唄すずらんクリニックは単体の医療機関ではない。風のすずらん会という医療法人に属する三つのサテライトクリニックの一つだ。この法人の特徴は変化をし続けること。これはじっとしていてはエネルギーは生み出せないとする理事長の意向によるもので、この十年間を見ても当法人はソフト面でもハード面でも落ち着きなく変化をくり返してきた。
その変化の姿勢は人事も例外ではなく、ずっと同じ部署・同じ役職で勤務している職員は数少ない。江別、北広島、美唄、時には九州の福岡のクリニックまで巻き込んで人事異動がくり返される。
美唄のクリニックの現職員を見ても、江別すずらん病院や北広島メンタルクリニックでの勤務経験を持つ者がいる。またかつてここで勤務して、今は江別や北広島で働いている職員もいる。組織を停滞させないという利点はもとより、様々な経験を積めるのは医療者個人にとってもメリットであろう。
僕としても週一回勤務する江別の病棟やデイケアにかつて美唄で一緒に働いた職員がいてくれるのはとても心強い。美唄の患者さんの入院治療を江別にお願いする際も、クリニックと病院、つまり患者さんを送る側と受ける側の両方の経験がある職員がいた方が調整もスムーズとなる。
働いているとつい別の部署の文句を言いたくなるものだが、多くの場合それは相手の事情を知らないことからきており、様々な部署を経験することは他部署への陰性感情を軽減することにもつながる。新しい環境ややり方に慣れるのは大変なことではあるが、こう考えると激しい人事異動のメリットはたくさんあるのである。
つい先日もかつて美唄で働いていて今は江別で勤務している看護師さんが用事でクリニックに来た。懐かしい顔に会えるのは患者さんにとっても職員にとっても心地良い刺激になる。また毎日顔を合わせている僕らでは気付かない、数年ぶりに会うからこそ気付く患者さんの変化というのもあり、それをアドバイスしてもらえたのはケアの上でとても有益だった。
一度一緒に働いた仲間には不思議な親近感が宿る。江別の業務もお忙しいと思うが、また時々は美唄に還ってきてほしい。それにしても理事長、まさかここまで計算していたとは。
(文:福場将太)