コラム

2022年12月「心の調律」

 北海道で新型コロナウイルスの感染が広がっている。それはもうごく身近な距離感で、以前は知り合いの知り合いが感染といった感じだったのが知り合いの感染に迫り、ついに先月は自身も感染するに至った。仕事以外外出はせず手洗い・マスクにワクチンまでやっていたのだが、本当にすぐそこにまで迫ったということなのだろう。幸い軽症で回復できたが、患者さんにもスタッフにも負担をおかけした。

 一番の後遺症は意欲の低下だった。やはり一週間も家にこもっていると気持ちが下がる。普段はストレスも感じるが、やはり人間は就労によって心を支えられている部分が大きいのだと改めて感じた。そして復帰した際には少なからず周囲との温度差のようなものも感じ、前と同じテンションで働けるようになるまでにはそこからまた一週間ほどを要した。
 ずっと働けずにいた人の就職、休職してブランクが空いた人の復職、長年引きこもっていた人の外出。これらの支援はいずれも一筋縄にはいかないが、それもよくわかった。一週間社会との触れ合いを遮断しただけでこんなに心は戸惑うのだ、それが年単位となれば簡単に社会に適応できようはずもない。

 きっとこれは弦楽器の調律のようなものなのだろう。家にこもって一人だけで演奏していると気付かぬうちにチューニングが少しずつ狂っていく。そして外に出ていざみんなと合奏しようとした時にその大きなずれに驚くのだ。心には絶対音感も音叉もない。毎日ちゃんと人と触れ合ってお互いの心を細かく調律しておくことが欠かせないのだ。

 そんなこんなで2022年ももうじき終わる。多くの病院や施設でクラスターが発生し、必要な医療・福祉が受けたくても受けられない現状を肌で感じている毎日だ。
 今は自分で守れる健康は自分で守ることが必要。それもしながら人との触れ合いも絶やさないというのは本当に大変だと思うが、来年こそいい年になると信じてみんなで今を乗り切ろう。
 一年間、お疲れ様でした!

(文:福場将太)

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