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コラム
2022年11月「著述の秋」
秋の日はつるべ落とし。この時期夕方ともなれば北海道はもう真っ暗で、夜長の時間に読書に勤しんでいる人も多いのではないだろうか。そして中には自ら筆をとって文章を綴っている人もいるかもしれない。
音楽を聴くのと演奏するのとではまた違う趣があるのと同じで、文章を読むのと書くのとではまた違う楽しみがある。そして人間は遠い昔から著述という文化を受け継いできた。俳句、川柳、短歌、詞、日記、エッセイ、評論、小説…やはり分泌には動画や音声にはない魅力がある。今やインターネットで誰でも自らの文章を世界に公開出来る時代になったが、それでも作家を夢見て新人賞に応募する者は後を絶たない。この世界にはきっと星の数よりたくさんの文芸作品が存在している。
医学部は大学受験のカテゴリーでは理系に分類されているが、文芸が大好きな医者も数多く存在する。医者として医学書や医療エッセイ本を発表するだけでなく、小説や詩集を発表する先生もいる。僕の母校の東京医大だと山田風太郎先生は推理作家でもあったし、『チームバチスタの栄光』や『仮面病棟』など、実際に医療ミステリーと呼ばれるジャンルで医医者が執筆した小説が映画化されたりもしている。小説ではないが漫画『ブラック・ジャック』を生み出した手塚治虫先生が医師免許を持っておられたのも有名な話。
そして実は患者さんの中にも著述を愛好する人は少なくない。長年のライフワークとしてブログやエッセイを書いていたり、「調子が悪くて生きるのがままならなかった頃に小説を書いてました」という人もいたりする。人は書くことで気持ちが整理され、感情が解き放たれるのだろう。文章を書く・小説を作るなんて特殊な才能がないと無理だと敬遠している人も多いが、誰でも唄を歌ってよいのと同様、著述も誰だってしていい身近な娯楽。鉛筆一本と紙一枚があればどこでも始められる。心のモヤモヤが抜けない人は、秋の夜長に文章を書いてみてはいかがだろうか。そこから新しい世界が始まるかもしれない。
この月1回のコラムもなんだかんだでもう十五年くらい続いているのかな。これからも色々な心をしたためていけたらと思う。
(文:福場将太)