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コラム
2022年01月「カウント0 これからずっとこの街で」
年が明け、新しいクリニックでの診療が始まった。前の建物とは異なる部分も色々多いので特に2階のデイケア部門は慣れるまでに少し時間はかかるだろうが、逆にいえばその緊張感を利用して丁寧に仕事をしていけるチャンスでもある。1階の外来部門についていえば、とにかく綺麗になったので診療していて気持ちが良い。もう雨漏りや停電、寒さや凍結に悩まされることがないというのは嬉しいこと。もちろん大切なのは工夫のアイデアなので、与えられたこの新クリニックをどう活用していくかが今後の楽しい課題である。
そんなわけで開院16年目を迎えた美唄すずらんクリニック。開院当時は市内唯一の精神科クリニックであり、長期入院していた患者さんたちの退院後の通院先としての役割が大きかった。その後、新しい理事長先生のもと新しい理念を掲げることとなり、より回復に主眼を置いた医療、かつてのように病院が患者さんを管理するのではなく、患者さん自身が主体性を持って回復に必要な治療を選んでいく医療を目指すようになった。
この十五年で美唄という街も変わっていった。ゆっくりとではあるが心の医療に対する敷居も下がり、前よりも気軽に病院に相談に来てくれる人が増えた。福祉的就労のための事業所もいくつか新設され、資源の選択肢が増えたことはとても喜ばしい。ただ一方で人口の減少は深刻で、市民の数もスタッフの数も少なくなる中でいかに医療の質を保つかというのは、美唄に限らず多くの街で向き合わねばならない問題だろう。
日本は生まれ育った家や街を大切にする文化が根強い。病気になったから愛する故郷を離れなくてはならない、追い出されなくてはならないというのは人生において大きな不利益である。仮に認知症になったとしても、心の病気になったとしても、自分の愛する故郷で暮らせるような、そんな医療をこの街でやっていけたらと願っている。
(文:福場将太)