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コラム
2021年08月「デイリー猛暑」
先月から今月にかけて、患者さんと交わした言葉で一番多かったのは「暑いですねえ」だったのではないだろうか。この北の大地に赴任してもう十五年になるが、これほど暑さと闘った年はなかったように思う。
これまでにも暑い日はあった。寝苦しい夜もあった。でもそれは続いてもせいぜい数日のこと、こんなに毎日30℃以上が二週間続くなんてことはなかった。北海道のある街では最高気温38℃を記録。なんとこの街、冬には-38℃近くまで下がったこともあるというのだから、夏と冬で75℃以上の気温差が生じることになる。冬は過酷だがその分夏が快適、という北海道の魅力はこのまま過去の遺物になってしまうのだろうか。
それはさておき、暑さが精神に及ぼす影響を考えてみる。一つは意欲を低下させること。我が家にはクーラーがない。帰宅したらやろうと思っていた趣味も勉強もほとんど手につかなかった。そしてもう一つはやはり不眠。寝付けないし夜中に何度も目が覚めた。扇風機と氷枕を駆使するにとどまらず、夜中に何度冷たいシャワーを浴びたか。「茹だる様な暑さ」とはこういうことかと実感した。
心頭滅却すれば火もまた涼し。一流の精神科医なら暑さに対する認知を修正して涼しく感じられるのかもしれないが、そんな技術は僕にはない。ソーラーパネルみたいに熱をエネルギーに変えられたらいいんだけど、残念ながらエネルギーは奪われっぱなしである。
北海道のみなさん、暑い夏を本当にお疲れ様でした。クーラーにしがみつきながら、それでも太陽に恋をしましょう。
(文:福場将太)