コラム

2011年06月『P.S. Woman』

 初夏である。店先などで活けられたショウブの花を見かけることがある。ショウブという花は太陽の下よりも雨の中で薫り立つ、という話を聞いたことがあるが、雨の多いこの季節にショウブの花を見かけるとなんとなく病院で働く女性職員たちの姿を重ねてしまう。

 いまや女性が働くのなんて当たり前の時代で。結婚・出産後も職場に戻ってバリバリやっている人がたくさんいる。自分の仕事に誇りを持って、仕事と恋愛なら迷わず仕事と応える人も多いだろう。この社会、女性なくしてはまわっていかない。そして私達の職場も女性の皆さんの大活躍によって支えられていることはもはや否定の仕様がない。

 病院において最大の組織は看護部である。これは人数的にも実質的にもその通りで、入院において一番患者さんと一緒にいて一番患者さんを見ていて患者さんをしっているのは看護師さんだ。外来においても、訪問看護やデイケアで看護師さんはドクターよりもはるかに多くの時間を患者さんとス過ごしている。最近は男性の看護師さんも増えてきているが、やはりまだまだ女性が大多数なのが現実である。また看護助手さんにも女性は多い。男性かおまけの力仕事もこなしてくれている。
 そして心の医療には欠かせない存在・精神保健福祉士にも女性は多い。デイケアや訪問看護にも参加し、入退院の調整や様々な書類手続きまでその活躍の場面は多い。
 まだまだいるぞ。作業療法士さんに薬剤師さん、栄養士さんに調理委員さん、心理士さんに清掃員さんと病院にはあらゆる部署に女性がいて、それぞれの役割を担っている。これはうかうかしてると男たちの居場所がなくなっちゃうぞ。いや、すでにそうなりつつあるかも。そのうち女医さんだって続々登場するかもしれないし。

 あれ?忘れてない?
 わかっていますぜ、女性が活躍しているもう1つの部署、それは事務所です。受付は病院の顔、訪れる患者さんやご家族に対応したり、お会計を精算したり、物品購入にスケジュール管理と様々な業務を担ってくれている。そんな忙しい仕事の最中に彼女たちはお茶を入れてくれる、笑顔をくれる、華やかさをくれる。癒しをくれる、いじめてくれる・・・あ、こりゃ失敬。いつも本当にありがとう。

イメージ 医療に従事する女性は強い。血を見ても裸を見ても動じない女性なんて可愛げがないなんて思われる方もいるかもしれないが、病院の職員である限りは可愛さや弱さ、儚さなんて二の次だ。必要なのは強さ、そしてうわべではない本当の優しさ。時にはお化粧もオシャレもほっぽリだして泥まみれにならなくてはいけない。どんなアイドルより、モデルよりも、そんな時の彼女たちはとても美しいと思う。可愛いだけのお姫様なんて足元にも及ばない。

 病院というところには、いつも少なからず悲しみの雨が降っている。そんな中でひときわ薫り立つ彼女たち。その姿は艶やか精錬で麗しい。強く、優しく。たくましい存在。誇り高き医療従事者。

 追伸、あなたたちはまぎれもなく女性だ。

(文:福場将太 写真:瀬山夏彦)

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