コラム

2010年4月『同じ季節の共有者』

 4月、入学式も終わり全国の学校では部活の勧誘が盛んに行われていることだろう。私の出身した大学も部活熱が相当のものだった。生徒数に対し部活の数が多い、にも関わらずどの部にも伝統があるためOBの手前廃部にするわけにもいかない。そんなわけで毎年勧誘には文字通り部活の命運がかかっており、いきすぎた勧誘活動を規制するためのルールまで厳しく定められている始末。今回はそんな部活の勧誘の想い出を。

 私は学生寮に入ったので、入学式の数日前に上京した。するとそこには部屋案内や荷物運びをしてくれる先輩が…。私は彼に食事に誘われ、行ってみるとそこには柔道部の面々が。まあそれは「寮勧誘」と呼ばれる伝統行事だったのだが、結局私はそのまま入学よりも前に柔道部に入部してしまった。今まで柔道はおろかスポーツというものに全く魅かれることなく生きてきた文化系の私がまさか道着に身を包むことになるなんて…。最初は安易に入部してしまったことを後悔もしたが、今となっては本当によかったと言い切れる。
頭が真っ白になるまでの稽古、逃げ出したくなるような合宿…気がつけばよい同輩・後輩・先輩に恵まれ、強い絆ができていた。試合で負けた時の悔しさや声が枯れるまで仲間を応援する気持ち…それまでどちらかというと冷やかな印象を持っていたそんな熱い美学が、ほんの少しだけわかったような気がする。正直今でも柔道にはたいして興味がない。でも、柔道部は大好きだ。そして思い知っている…同じ季節を共有した仲間の存在が、人生においてどれだけ有り難いかということを。もしあの時たまたま柔道部に勧誘されていなかったら…どれだけたくさんの幸福を知らずにいただろう。たかが部活、されど部活、そんなものに翻弄される私たちの人生がやけに愛しかったりする。

イメージ あの頃の仲間たちは、現在白衣という名の道着に身を包んで闘っている。辛いことも多いけど…あの過酷な練習や長?い師範のお話を思い出せば…へっちゃらですよね!時々しか会えなくなったけど…ほら、またふとしたところにあの夏のかけらが残っている。

勧誘大成功を祈ってるぞ、現役諸君!
勧誘した責任をとって、必ず幸せにしてあげてね!

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