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デイケア活動日誌
2023年10月『やってみよう! SSTとCBT』
患者さんが病院に通うのは回復を目指すためですが、回復とは病気の症状が良くなることだけではありません。病気の症状はあったとしても、学校に通えたり仕事に就けたり、一人暮らしができたり子育てができたり、そんなふうに社会生活の中での能力や役割が高まることを『社会的回復』と呼びます。
当クリニックで土曜日午後に行なっている『心学塾』は、病気や障害を持ちながらでも元気に働き続けることを目指す治療プログラムなので、まさにこの回復に主眼を置いているわけです。
お薬を飲むだけでは社会的回復にはつながりません。病状を完全に消し去ることが難しい心の医療では、社会的回復に役立つ治療法・訓練法が色々と開発されています。
●SST(社会生活技能訓練)
上達させたい社会生活の能力をロールプレイで練習する方法です。10月7日の心学塾でやってみました。
職場において、伝えたいことがうまく伝えられない、人にお願いするのが苦手、という悩みは多いです。逆に言えば、これが上手になれば随分働きやすくなるわけです。そこで今回のテーマは『冷たい上司へのお願いの仕方』。患者さんがお願いをする社員役、スタッフが冷たい上司役でみんなの前でロールプレイ、そしてみんなからのコメントをもらいました。
優しく丁寧にお願いする作戦の人もいれば、食い下がらずに何度もお願いする作戦の人もいましたが、やっぱり実際に演じてみるとテキストで勉強するよりも学べることが多いですね。スタッフの冷たい上司役の演技が板につき過ぎていてちょっと恐かったです。
●CBT(認知行動療法)
物事に対するとらえ方を変えることで気持ちを楽にする方法です。10月21日の心学塾でやってみました。
最初にみんなに訊いてみると、自分はネガティブ思考だというメンバーが多かったです。職場で嫌なことがあった時、それを後ろ向きにとらえてしまうとストレスが増大します。そこでまず例題として『喫茶店でホットコーヒーを注文したはずなのにアイスコーヒーが来た』というテーマでとらえ方をみんなで考えてみました。
「自分が言い間違えたんだ」「いい加減な店なんだ」という意見も出た一方で、みんなで話していると「お店が忙しかったんだ」「店員さんは新人だったんだ」、さらには「アイスコーヒーが店長のオシだったんだ」「もう一杯、次はアイスを飲めばいいじゃないか」などなど、クスッと笑ってしまうような意見もたくさん出ました。本当は例題の後に職場をテーマにした本題をやる予定だったのですがこれだけで一時間終わってしまいました。やっぱり三人寄れば文殊の知恵、人の心は十人十色。メンバーの数だけ色々なとらえ方があるもので、お互いの発想がお互いの学びになるのがとても楽しかったです。「これは店員の嫌がらせに違いない」というスタッフのとらえ方が一番ネガティブでした。
SSTやCBTなんて言うとなんだか専門的で難しい感じがしますが、大切なのはその理論。手法は簡単でもよいから、人間は人間の中で回復する、学び合って成長するんだと感じられることがまず大切。お互いが生徒でお互いが教師、これぞ心学塾です。
そんなわけで、今後アンガーマネジメントやアサーショントレーニングもやってみる予定。これもメンバーのみんなの協力があるからできること、いつも本当にありがとう!
(文:福場将太)