デイケア活動日誌

2021年08月『メメント・モリ』

 今月のこころの保健室ではあえて二回とも『死』をテーマにした。古代ローマ人には「メメント・モリ(自分がいつか死ぬことを忘れるな)」という教えがあったそうだが、時には死について考えることがよりよい生につながる。特に今月は死者が戻ってくるお盆でもあり、多くの人が亡くなった戦争が終わった終戦の月でもある。

 勉強会で伝えたかったことは、何より相談することの大切さ。死にたい気持ちになることは誰にでもある。それを自分一人だけで抱えてしまうと、どんどん膨らんで他の大切な気持ちを覆い隠してしまう。死にたい気持ちはあってもいい、死にたいと思うくらいつらいことがあったのならそれを誰かに相談してほしい。誰にも言えない悩みならそんな時こそ心の医療者の存在を利用してほしいと思う。

 また今回はサバイバーズ・ギルトについても少しだけ触れた。たくさんの人が犠牲になった中、生き残った人が抱いてしまう罪悪感のことだ。東日本大震災、タイタニック号沈没事故、広島や長崎の原爆。本来嬉しいはずの生存者が自分は助かるべきじゃなかったと自分を責めてしまうのだ。そのために幸せになることを避けたり、時にはせっかく生かされた命を捨てたりすることもあると聞く。人間の心というのは本当に複雑だ。

 今はコロナの情勢で死というものがいつもより近くにある。誰もが不安を抱いている。そしてベッドの数やワクチンの数、人工呼吸器の数に限りがあるのならば、ここでもサバイバーズギルトが生じる危険は大いにある。
 みんなで生きよう。そのために語り合おう。悩みを打ち明け合おう。感染対策とは矛盾してしまうが、今は独りぼっちで考えてはいけない。
 やっぱりデイケアという場所は守らなくてはいけないな、と改めて感じた夏だった。

(文:福場将太)

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