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コラム2025年6月「極端な変化」
北海道で暮らすようになって十八年以上が経つが、最も変化したのは気候であろう。一言で表すなら、あまりにも極端になった。
今年の春の寒暖差はすごかった。クーラーが必要なくらい暑い日が来たかと思えばまたストーブを炊くような寒い日に逆戻り。一日の中でも、日中は半袖で過ごせる陽気なのに夜は毛布にもぐり込みたいくらい気温が下がる。これでは調子を崩す人が増えるのも無理はない。
いや、人だけとも限らないか。美唄の名産の一つであるアスパラは、あたたかいと一晩で10センチ以上も成長するが、寒いと成長が停滞するそうだ。然るべきタイミングで気温が上がってくれればアスパラもぐんぐん育ってやわらかくなる。逆に気温が下がってしまうとゆっくりしか成長せず硬くなる。食べておいしいのは当然前者である。
ここまで気候が不安定だと、アスパラ農家さんだけでなく、作物を育てている方、屋外で働いている方は本当に大変だろう。
僕はといえば、専ら屋内の仕事。診察室で日中を過ごすので外の気候を感じることが非常に少ない。せいぜい窓から差し込む日射しや窓を叩く雨音を感じるくらい。特に最近は朝と昼間で全く気候が変わるので、来院した患者さんから「今日は暑いですね」と言われて初めて暑い日であることを知ったりする。
そんな自分の最近のマイブームは、昼休みに屋外へ出ること。これまでは昼食を摂って午前中の記録を書き終わったら、そのままデスクでパソコンをいじったり、ソファでゴロゴロしたりすることが多かったが、この頃はクリニックのおもてへ出て背伸びと深呼吸をするようにしている。ほんの数分のことだが、外気に触れられるのはなんだか嬉しく、良い天気ばかりではないが、それでも心地よい開放感を味わえる。
人間の心にも移ろいがある。穏やかな変化もあれば時に極端な変化、体がついていかないくらいの激動もある。この不安定な気候は、もしかしたら大自然の精神状態を映し出しているのかもしれない。
それでも愛したい。時に極端に変化する自然を、心を、人生を。
(文:福場将太)