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コラム2023年10月「リフレッシュの男」
都市伝説かもしれないが、医師の平均寿命は70歳という恐るべきデータがあるそうだ。これが事実なら一般的な平均寿命より10歳以上短いことになる。おいおいおい、健康の専門家がどうして早死にしているんだ? 医者の不養生? それとも過労死?
確かに医者は過労というイメージがある。産婦人科医をやっている学友に話を聞くと、人手不足でしょっちゅう泊まり込み、出産はいつあるかわからないからオフでも病院のそばにいなければならず、家族と旅行なんて行ったことがないそうだ。またコロナ禍において、発熱外来や感染症病棟の医者の疲労が限界という報道もテレビで見た。
そんな壮絶な働き方をしている医者たちも存在しているのは事実。では自分はどうかというと、暇ではないが過労というほどでもない。確かに忙しい時はある。同僚が突然休まなくてはいけなくなったり、たまたま緊急の案件が重なったりして業務量が増大する日はある。新患が多かった日に別の患者の診断書や紹介状の依頼もたくさん来たりすると、診療が終わった後にカルテや書類のデスクワークで夜中まで残らなくてはならない日もある。
ただ毎日ではないし、この仕事は好きでやっているから必ずしも多忙イコール過労とも限らない。精神科医は患者さんから元気をもらえる有難い仕事でもあり、患者さんの話をゆっくり聞いたり、その言葉をじっくり記録にまとめたりしている時間は過労どころかむしろ癒しだったりするのである。このコラムを書く時間も、残業手当も何もつかないが楽しみという意味では十分な報酬が得られている。
とはいえやはり仕事だけの日々になってはいけないとも思う。人の話を聞く仕事は自分の心に余裕がないとできない、すなわちしっかり仕事をするためにもちゃんと食べて寝てエネルギーを蓄えておかねばならない、趣味や娯楽をないがしろにしてはならないのだ。
うちの理事長は医局会の旅に、「みんなちゃんとリフレッシュ休暇を取ってください」と口を酸っぱくしておっしゃる。そしてご自身もしっかりお休みや楽しみを生活の中に作っていらっしゃる。それが功を奏していることは、医師の平均寿命とされる年齢をとっくに過ぎても元気に現役で働き続けていらっしゃるそのお姿が証明している。
そんなわけで来月は講演会で京都と東京へ行く自分もトンボ返りせず、それぞれ一日ずつお休みをもらって少し現地でリフレッシュしてくるつもりだ。今年も残すところ三ヶ月、息切れせずに大晦日のゴールテープを切ろう。
(文:福場将太)