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コラム
2020年10月「疑心暗鬼に御用心」
今年も無事、デイケアの恒例プログラムであるリンゴの収穫を行なうことができた。ただ例年のように江別や北広島まで出張販売に行くことは自粛したので、事前に注文を受けて発送する形となった。
リンゴといえばアダムとイブ。禁断の実を食べてしまったせいで知恵を得た二人はエデンの園を追われてしまうわけだが、こうして手に入れた人間の知恵の中でもとりわけ他の動物より秀でているのは想像力であろう。想像力があるから危険を回避したり、展開を予想したり、名探偵は犯人を推理したりできるのだ。
ところがこの想像力、まずい方向に働くと疑心暗鬼に陥ってしまう。あの仕草にはこういう意図があるんじゃないか、あの目つきにはこういう感情があるんないか…と疑い始めればきりがなくなる。
確かに精神科医にも想像力は必要で、僕たちは患者さんの表情や言葉の裏にある出来事や気持ちを想像する。もしかしたらこんなことが起きているんじゃないか、口ではこう言っているけど本心ではこうなんじゃないか…などなど。しかしこれだって度を過ぎると現実から遠くかけ離れてしまい、それこそ妄想の域に達してしまう。だから想像力が暴走しないように、ちゃんと手綱を握ってコントロールするよう意識して仕事をしている。
これからの季節、普段の風邪もきっと増える。ちょっと熱っぽい、ちょっと咳が出る、ちょっと喉が痛いなんて症状は誰にでも起こる。もちろん気をつけなくてはいけない新型コロナウイルスだが、あまり疑心暗鬼になり過ぎても神経が参ってしまう。
良い想像と悪い想像のバランスをとって、冷静に対処することが大切である。
(文:福場将太)