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コラム
2020年05月「燃えよ東医魂」
実は最近ヘビーローテーションで聴いている曲がある。それは『東医小唄』。某有名演歌歌手が歌ってくれているのだが、この曲を知っている人は稀であろう。それもそのはず、これは我が母校・東京医科大学の学生歌の一つなのだ。二十年以上前に製作された記念CDに収録されており、当然一般には出回っていない。校歌も好きだが、僕はとりわけこの曲が気に入っている。とはいえ普段から愛聴するほどのマニアではない。卒業して十五年、どうして今この曲を聴いているのかというと、学生時代の仲間たちがふと懐かしくなったからだ。
北海道にいることもあって、普段なかなか東京時代の学友と交流することは少ない。親しい友人とも直接会うのはせいぜい年に一回程度、それ以外の人たちとは時々のメールと年賀状だけのおつき合いになっているのが現状だ。
だが今回、新型コロナウイルス感染拡大の事態によって何故かあの頃の仲間たちの顔が浮かんだ。この情勢の中、みんなどうしているんだろうと思った。
僕が母校に入学した時、一番最初に思ったのは「いつの時代やねん」ということ。学生寮に入居しさらに柔道部に入部したため余計にそう感じたのかもしれないが、学ラン姿で日の丸扇子に鉢巻きで演舞する応援団、一言でも言い間違えたら粗相となる儀礼的挨拶、そして有無を言わさぬ絶対的封建制度…。僕の頃でも昔と比べればかなり緩くなったそうだから、一体かつてはどんな世界だったんだとぞっとする。医学部がいくら旧態依然とした所でも、21世紀に入ってこれでよいのか、ととりわけ伝統というものに苦手意識が強い僕は思っていた。
東医小唄にもその片鱗は見える。「新宿の町なら大学は東医」、「母校のためなら命まで」、「命捨ててもその名は残る 大学東医のその名は残る」、「俺たちゃ天下の東医生」などの歌詞は、今では時代錯誤だと言われてしまいかねない。
しかし一方でこんな歌詞もある。「大学東医の学生さんは 度胸一つの男伊達」、「日本中を歩いていきますオンボロ白衣」、「心は錦 どんなことにも恐れはしない」、「可愛いあの娘にゃ勝てやせぬ」。ちょっと傲慢だけど豪快で、惚れた腫れたしながらも誇りと覚悟を持って医の道に邁進する、その母校愛と仲間意識が僕は今とても心強く感じた。
みんなどうしているだろう。おそらく日本全国それぞれの分野、それぞれの立場でこの事態に向き合っているだろう。正直医者だって怖い。家にこもっていたくもなるが、きっとみんなも今闘っているんだろうなと思うとやはり背中が押される。勇気が湧いてくる。
それぞれの専門がある。それぞれの役割がある。精神科医の使命は、この情勢の中で不安定になった心たちを支えること。内科の最前線でウイルスと闘っている仲間たちには頭が下がるばかりだが、せめて後方支援はしっかりやりたい。
「ヒポクラテスより受け継ぎし仁の術。巡り合せたこの一大事、今こそ一丸となりて見えない敵に打ち勝たん!そしてその暁には、みなで歌わんがな、踊らんがな!」
そんな応援団のエールが聞こえる気がする。
みんな、頑張ろうな!必ずまた会おうな!
(文:福場将太)