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コラム
2019年1月「溜まりゆく一滴」
我ながら割り切りの悪い性格だとつくづく思う。腹をくくるとか覚悟を決めるとかそういったことがどうも苦手で、心はオートリバーステープのように価値観を反転させながら行ったり来たりしている。この仕事をしていることにこの上なく幸福を感じる日もあれば、たまらなく嫌になる日もあるのだ。まあそれが自分らしさなのだろうと最近は思ったりもしている。
先日同じ仕事をしているある方とお話をした。その先生は「自分がどんどん嫌な奴になっていくのがわかる」と語っていた。社会人をすることで生じる変化には必ずプラスの部分とマイナスの部分がある。僕もこの仕事をすることで良い方向にも悪い方向にも変わってしまったと自覚している。
確かに学べたことは多い。一生の財産と思えるような経験もできた。まだまだ未熟であるがそれでも新人の頃よりは成長できたと思う。しかし、確実に少しずつ嫌な奴になっているのもまた間違いない。だからその先生の悩みには大きく共感した。
人間を相手にする仕事なのに人間からどんどん離れていくような、心を扱う仕事なのに心がどんどん狭くなるような、なんだか苦くてどす黒いものが一滴一滴毎年心の奥底に溜まっている。それが満杯になってこぼれるのが早いか、僕がこの仕事を引退するのが早いか。
医療職に限らずきっと誰にでもあるだろう。毒気を全く含まない仕事はない。仕事のせいにしたり自分のせいにしたりしながら、不本意なことをやったり言ったりしなくてはいけない。
なりたくない大人に随分なっちまったが、それでも支えてくれる大切な人たちのおかげで見失わずにいられる心もちゃんとある。続けてきてよかったと思える日もたくさんある。
そして僕よりずっと先を笑顔で歩いている大先輩たちもいる。そうだ、いじけている場合ではない。
新鮮な空気を胸いっぱい吸い込んで、今年もこの仕事を続けてみようか。
(文:福場将太 写真:カヤコレ)