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コラム
2015年05月「これからもっとこの街で」
美唄メンタルクリニックにとって、新年度は実質上今月から始まったと言っていい。私は平成18年12月の開院当初より勤務しているが、今また新しい段階に来ていることを強く感じている。今回のコラムでは、これまでのこととこれからのことを少し綴ってみたいと思う。今のこの心を忘れないために。
開院当時、当院はこの街では初めての心の医療を担うクリニックであった。しかし日本という国がまだまだそうであるように、メンタルクリニックは少なからず敷居の高い場所だったと思う。それでも心の医療を求める人たちが徐々に足を運んでくれるようになり、こちらからも一歩ずつ街に歩み寄っていけた。心についての悩みはその土地柄によっても大きく異なる。クリニックが街に認知されていくに従い、その様々なニーズに応える技術をこちらも身につける必要に迫られた。
平成21年4月、着任した新理事長によって法人全体の立て直しが始まる。クリニックも和気藹々だけではもう許されない。治療技術も組織もより強靭となる必要があった。現状に甘えず、より良い医療とサービスを模索する日々が始まった。
そして平成23年5月、本格的にソフトとハードにターボエンジンが搭載される。まずはソフト、美唄メンタルクリニックは法人において地域医療課という部署となり、スタッフを束ねる課長が着任した。心の医療の中でも特にデイケアに豊富な知識と経験を持つ看護師だ。そしてハード、クリニックは美唄駅前に移転し食事提供も可能なデイケア設備が備わった。食堂併設のクリニック…にわかには想像しにくいかもしれない。しかしデイケアという心を元気にする治療において、ごはんの存在は非常に大きいことをスタッフも思い知らされた。かくして外来診療・訪問看護に新たにデイケアを加えた三本柱による新生クリニックが動き出したのである。
さらに平成24年4月からは新たな使命が課される。法人の母体となる江別すずらん病院の開院による、そのサテライトクリニックとしての機能だ。特に美唄の街には心の治療のために入院できる病院がない。クリニックが窓口となり江別の病棟への入院相談に対応することは、新たな責務であり存在意義だと感じた。
そして迎えた平成27年。移転後の四年間で達成できたこととまだこれから達成したいことを整理し、理事長に報告した。またこれまで課長だけにお任せしていた職員面談を医師もやらせて頂き、一緒に働いている一人一人から言葉をもらった。
その上で4月某日、クリニック始まって以来の大会議を決行。患者さんには迷惑をかけたが外来も訪問看護もデイケアも中止にして、クリニックに勤務する全職員が同じ机を囲んだ。これまで明文化していなかった当院の理念を示し、5月からの新体制に向けて組織図と各スタッフの役割をさらに明確化した。会議は長丁場となってしまったが、誰一人欠席もなく全員でこれからの話ができたのは本当に嬉しかった。もちろん絵に描いた餅では意味がない。会議で満足しては本末転倒、全てはこれからの実践にかかっている。
また4月末にはもうひとつ大きな変化が訪れた。移転後のクリニックを共に歩んだ院長の退職だ。淋しさは尽きないが、新たな地でまた心の医療を続けていかれるとのことで、ご活躍を応援したい。最終日にスタッフ一人一人にかけて下さったお言葉を励みにして、私たちは前に進む。
そして今、5月。新院長が着任し新体制が始動。新院長、と言ってもこれまでも江別すずらん病院に勤務され美唄にも応援に来て頂いていた先生なのでスタッフも顔馴染み。一緒にたくさん仕事ができるのがとても楽しみだ。
…とまあざっとではあるが、これまでの道のりを振り返ってみた。もちろん自画自賛するほどまだ何も達成できていないし課題も問題も山積みだ。それでもあえて今ここに書き残したいことがあるとすれば、やはりその時その時を精一杯考えたいということだ。もちろんどんなに考えて出した答えだって、後から振り返れば間違いに気付いたり、未熟だったりするかもしれない。もっとよい答えだってあるかもしれない。実際に四年前の五月に書いた自分のコラムを読み返すと、そんなふうに思ってしまう。
それでもその時その時の精一杯に従って働くことしか私たちにはできない。今月から始まった新体制をまずはとことんやってみたい。そしていつかこのコラムを自分で読み返した時、一体どんなふうに心は感じるのか…。そんなふうに思ったら、また生きるのが楽しみになる。
これからもっとこの街で、心の医療を探究したい。誰かの役に立ちたい。
(文:福場将太 写真:カヤコレ)