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コラム
2015年01月「いとしのマイホーム ~前編in広島」
大晦日を実家で過ごしたのはもう何年ぶりだろうか。元旦に広島に移動というのは一度会ったが、年末からすでに帰省しているというのはそれこそ学生時代以来かもしれない。年末年始は一人北海道の家で連休を満喫するのを常としてきたが、今回は何の気まぐれか休みを全て里帰りに当ててみた。さて、その結果とは…。
まず30日夜に広島到着。31日の日中は母方の祖母を訪ねる。夕食はそば、紅白を見てゆく年くる年で除夜の鐘を聞き0字回った瞬間に両親と「あけましておめでとうございます」。元旦の朝はまた同じ挨拶をしてお雑煮と届いた年賀状の整理。昼から神社に寄りがてら父方の祖母宅に赴き叔父さん一家とおせちを囲む。夜に帰宅し相棒スペシャルを見る。2日は高校時代の友人と会食し、帰ると訪ねてきた妹一家とも語らう。3日は母方の親戚と会食。そして4日早朝に北海道へ飛ぶ。
こうやって思い返してみてもなんとまあ…絵に描いたような正月ライフ。私が参加したのは久しぶりだが、実家ではこれが毎年の恒例で行なわれていると思うとぞっとする。帰省中特にやることもないだろうとノートパソコンまで持参したのに、結局予定していた作業にはほとんど手がつかなかった。とにかくもう親戚巡りで過ぎていった年末年始である。
しかしたまにはこんな正月もよいかな、とも思う。特に従兄弟連中もみんな社会人になってからはこんな機会でもないとなかなか会うことも難しい。集まっている顔ぶれは子供の頃から変わらないのに、それぞれ状況や肩書きが変わっているのは長期シリーズのホームドラマを見ているようで興味深い。お互い近況報告をするだけでも随分話が弾むものだ。また今は亡き祖父の懐かしい話などができるのもこういう時ならではだろう。当然結婚なんぞで新しい登場人物も増えており、ついでに次世代まで誕生しているときたもんだから…時の流れとは本当に恐ろしい。
まあ今年のような連休も滅多にないだろうしさすがに毎年集まりに参加というわけにもいかないだろうが、こういう幸福も大切にしなくちゃいけないなと思った。次回はもっとマシな土産話を持って帰りたいものだ。
それにしても広島でも雪に見舞われるとは思わなかったなあ。「こりゃ大雪だ」「電車が止まるぞ」とみんな騒いでいたけど、すっかり北海道人間の私は一人心の中で思っていた。
…どこがじゃ。
あと今回の帰省にはもうひとつ、個人的な目的があった。それは実家に置いたままにしている彼を磨いてやることだ。フォーク少年だった中学2年生の時に買ったどこのメーカーかもよくわからないあのギター。チューニングも演奏もまともにできないくせにいつも汗まみれになるまで弾いていた。抱いて眠った夜もあった。大学時代はまだ時々帰省の際に触っていたのだけれど、北海道に来てからはずっとほこりを被せていた。
そんなわけで今回はボディを磨くクリーナーや艶出し、新しい弦を準備。ただしこれらは飛行機に持ち込めないだろうから事前に宅急便で送る。そしていざ作業に取り掛かった。
20年の歳月は人間だけでなくギターにも大きいようで、まあ私の管理不足のせいなのだが、彼は随分くたびれていた。ペグも錆び、ネジは緩み、ネックも反っている。古い弦を外してからそのボディを何度も何度も磨き、ネジを絞め直し、新しい弦を張ってやる。そしてあの頃よりは少しは上手になったチューニングを行ない、ポロンポロンと鳴らしてみる。
…うん、大丈夫。さすがに新品同様とはいかないがまだまだ十分使い物になる。彼も、そして私も。
(文:福場将太 写真:カヤコレ)