コラム

2009年4月『友人代表』

 友情の証ってなんだろう。友達の条件ってなんだろう。
 大人になればなるほど、『仕事上仲良くしなくちゃいけない人』っていうのも増えていくから、ますますややこしくなる。でも、仲良くしている人はたくさんいるけど、友達となるとそんなにはいない気がする。じゃあ仕事を離れてプライベートでも遊んでたら友達? ……そんな単純な話でもない。

 結局友達の定義なんてよくわからないね。それこそ人によっても異なるのだろうし。けど、友達という言葉を聞いて、顔が浮かんでくる人が何人かいる。その中には身近な人もいれば、時々しか会わない人、もはやどこでどうしているのかもわからない人だっている。
 これはあくまで私の経験則だけど、友達っていえる人たちは、いつの間にかそうなってた人たちのような気がする。もちろん仲良くなるために少しの努力もしなかったかというと嘘になる。友達でいるために少しの無理もなかったかというと嘘になる。でも、なんていうかそれらはほとんど無意識だったんじゃないかなぁ。気がつけば「あ、君は友達だったのかな」ってそんな感じ。

 もちろん関われば関わるほど相手の色んな面が見えてくる。信じられない面やがっかりした面、面倒くさい面、最低だと思う面……そしてそれはきっと自分も相手にそういう面をたくさん見せているんだろうなってことだ。それがどちらかの我慢の限界を超えると、友情は破綻してしまう。
 じゃあ何か? そういう面が一切見えない、価値観や趣味嗜好が完全に一致した存在が親友なのだろうか? 最強の友情なのだろうか?

 実は来月、大学時代の同級生が結婚する。そしてその友人代表のスピーチを私がすることになったわけなのだが……考えてみればこれも不思議な話だ。出会った時にはむしろお互い生理的に最も苦手なタイプで、話題のひとつも見つからなかった。特技も勉強法も人生観も好みの異性も見事なまでに違っていて、今でもどこに共通項があるのかわからない。
 そんな私が友人代表? まあ決まったわけだから何かいいスピーチを……とそいつのいいところを机に向かって思い浮かべてみるのだが……全然出てこない。少しもないわけではないが、思いつくのはどれも平均的なことばかりで、あえて強調するほどのものでもない。……う〜ん、困った、悪いところやダメなところならいくらでも言えるんだけどなぁ……。

 ……ん? 待てよ、これはこれですごいんじゃないか? こいつの欠点をこれだけたくさん言えるのはきっと私くらいのもんだ。そして、私の欠点をいくらでも言えるのもきっとこいつくらいのもんだろう。
 この前だってそうだよ。3月末に久しぶりに集まろうかって話になって、君が「その日なら空いてたはず、よしやろう!」って言うから色々手配して段取りしたのに、君はあっさり「よく調べたらその日は無理っぽい」。そう、安請け合いで約束したり、その場の勢いで返事してしまうのが君の短所。学生時代からずっとそうだ。ほんでもって、はっきりする前から自分だけ勝手に盛り上がり、勇み足で準備して押し付けがましいのが私の短所。これも学生時代からずっとそう。
イメージ ……どうしようもないなぁ。でもそれはお互いがいたから気づいた短所かもしれないね。そんなことが嬉しく思えるからまた不思議だ。きっと君となら、お互いの欠点を100個言い合った後でも、楽しく一緒に飲めるだろう。結局3月末の企画も、君が遅れて登場してかなり深夜枠にずれこんだものの一応実現したわけだし……安請け合いと押し付けで、どうやら私たちはバランスがとれているのだろう。

 今はお互い違う場所で、違う立場で医療に携わっている。きっと命や治療に関する見解も君とは全然一致しないんだろうけど……やっぱり迷ったら君に相談したいなぁ。
 まあ楽しみにしてくれたまえ。今とっておきのスピーチを一人で盛り上がって考えてるから。まあ君があっさりまた「やっぱりスピーチいいや」って言うかもしれないことも承知の上で。

 さてさて、この職場でも先月から今月にかけていくつかの別れと出会いがくり返された。去りゆく人の中に、やって来た人の中に、いつか友情に気づく相手がいるのかもしれませんね。

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