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コラム
2008年10月『小さな声援』
僕たちは自分自身を認めたり励ましたりするのが下手だ。つくづくそう思う。
落ち込んでいる友人には無理矢理にだって希望を見つけてあげることが出来るのに、自分のこととなるとさっぱり。逆に自分が落ち込んでいる時に救いの言葉をくれる友人もまた、ちょっとしたことで落ち込んでいる。僕にかけてくれたあの言葉を自分に言えばいいのに……なんて思ったりするが、どうやら相手には届けられても自分には手渡せないものがあるらしい。
まあ、だからそのためにお互いというものがいるのかもしれないね。相手は自分を映す鏡、人によって傷つけられるけど人によって救われる……そんなことのくり返しだ。
てなわけで、自分よりも周囲の人を元気付けるほうが人間は得意、そしてそれがまわりまわって自分の元気に返ってくる……精神科医療だけじゃなく、これは毎日の生活でもそうだ。
そんなふうな気持ちで過ごしていると、何気ないいつもの会話の中で、僕たちは元気を与え合って暮らしているんだなってことに気がつく。そりゃあドラマみたいに大げさな名ゼリフを言い合ってるわけじゃないけど、何気ないいつもの一言の中に、小さな声援が隠れている。
ほら、ちょっとだけ耳を澄ましてごらん。
「おはよう」の中の「頑張ろうね」、「おつかれ」の中の「ありがとうね」、「バカだな」の中の「元気出せよ」、「おやすみ」の中の「大好きだよ」。
誰にも認めてもらえない、自分に自信がないっていう君、ちょっとだけ耳を澄ましてごらん、きっと小さな声援に気がつくから。
「頼むぞ」の中の「無理するなよ」、「嘘つき」の中の「信じてるよ」、「ごめんね」の中の「おかげ様で」、「バイバイ」の中の「また明日ね」……。
ね? 逃げずにそこにいる君への応援歌が聴こえるでしょう?
だから自分1人だけで自分の価値を決めてしまわないで、そんな小さな誰かの優しさを大切にしながら生きていこうよ。この世界は、誰も拒んではいない。
ほら、ほら、ほら! 小さな声援が聴こえてくるよ。
卒業アルバムの写真から、帰り道の夕焼け空から、風にそよいでる稲穂から、めくり忘れてたカレンダーから、いつも使ってるボールペンから、おばあちゃんのくれたお守りから、遠くの町にいる仲間たちから、地球の裏側の誰かから……。
気がつけばほら君自身の胸の中から、君への賞讃歌が聴こえる。
ね、君はすごいやつだ。大丈夫だって!