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コラム
2007年10月『ささえあい』
人間とは不完全なものだ……そんな当たり前のことに気がついたのは、随分大人になってからだったように思う。
子供の頃は、親や学校の先生たちは『完璧な人間』なのだと思っていた。迷いもなく、不安もなく、全てを知っていて何でもできる存在なのだと。しかし、自分がその頃の親や先生たちと同じような年齢になると、とてもそんなことはないのを実感する。誰もが欠点を抱えた不完全な人間であり、父もまた男性であり、母もまた女性であり、先生もまた発展途上だったのだと。
そしてまた、何もかも手に入れている人もいないのだということに気づく。医療の現場において出会う様々な患者さんたちを見ても、家族や親戚を見ても、学友達を見ても、職場の仲間を見ても……みんな何かが足りない。
健康を害していたり、お金がなかったり、お金があっても家族のぬくもりがなかったり、いい家族に恵まれていても学校問題で楽しい青春がなかったり、大切な人を失っていたり、将来の選択の自由がなかったり……みんな、当たり前の何かが欠けているものだ。まるで、そのことが私たち人間の証であるかのように。
だからといって「どうせ不完全なんだ!」と開き直れという話ではなく、だからこそ頑張らなくてはいけないこともあるし、自分だけが不幸だというのは思い上がりだし、そして何よりお互いの存在が大切だということなのだろう。
自分一人で頑張ったり耐えたりすることももちろん大事だが、ダメだと思ったら誰かに手を貸してもらうことも同じくらい大事なように思う。その時はみっともなくて情けないかもしれないが、必ず元気になって、余裕ができたら今度は自分が落ち込んでいる誰かに手を貸してあげればいい。そんなふうに、かわりばんこに落ち込んだり復活したりしながら、もちつもたれつ何とかみんなでやっていけたら……それでいいんじゃないだろうか。『完璧な存在』が1人ドンといるよりも、『不完全』同士が支えあっていく方が、何か人間らしくてとっても素敵な気がする。
今月から美唄メンタルクリニックの2階で始まった依存症患者さんのミーティング『美唄ささえあいの会』……これもまさにお互いの支えあいによるものである。もうお酒を飲まないために、もう悪い薬をやらないために、1人で断酒・断薬を継続するのは無理でもみんなでならできる!
これからもみんなで支えあって生きていこう。