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コラム2025年8月「念のため」
医療において「念のため」という考えは大切である。「念のために検査しておきましょう」というのは医者がよく口にする言葉であり、可能性としては低いかもしれないが念のために調べておく、それで何かが見つかって早期治療できれば最善であるし、何も見つからなかったらなかったで患者さんも安心できる。検査以外でも、念のための投薬、念のための入院が功を奏することはよくある。
一見メリットばかりのようなこの「念のため」だが、全くデメリットがないかというとそうでもない。
例えば新型コロナウイルスが大流行した頃のように医療が逼迫している情勢においては、念のため念のためと全ての患者さんを入院にしていては、ベッドが埋まって本当に危険な状態の患者さんが入院できないということにもなりうる。もちろん万が一急変した際の連絡手段などは確保した上でのことにはなるが、軽症の患者さんには入院せずに帰ってもらうという判断も、よりたくさんの命を守るためには重要になるのである。
心の医療においても、念のためが行き過ぎると患者さんの不利益になることは少なくない。例えば就労に踏み出すタイミングなどがそうだ。もちろん慎重さは大切だが、念のため念のためと準備に時間をかけ過ぎてはせっかくのチャンスを逃してしまうし、高まっていた患者さんのやる気もしぼんでしまうかもしれない。もちろん失敗した際のセーフティネットは用意しておくべきだが、勢いに乗る、可能性に賭けてみる、という判断もステップアップのためには重要になるのである。
目の前の患者さんの安全を図る。それは間違っていない。しかし、広い視野や長期的な視点で見た際には、それが患者さんの不利益になることもあるというのが医療という営みの難しいところである。
念には念を。されど時には勇気ある決断を。
(文:福場将太)