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コラム
2020年07月「権利のための戦い」
随分前のコラムでも一度テーマにしたが、7月4日はアメリカ独立記念日である。今から250年近く前、当時植民地にいた人々はイギリスから独立することを宣言した。宣言書には、アメリカ13の植民地は独立した国家となることと共に、全ての人間は平等であり誰でも幸福を追求してよいとする基本的人権の思想も盛り込まれている。
そしてその87年後にリンカーン大統領が行なった有名な演説でも、この独立宣言書は引用されている。その頃アメリカは奴隷解放をめぐり南北に分かれて戦争をしていたが、リンカーンは誰も人を支配する権利はないと説き、この戦争は民主主義を守るための戦いだと主張したのだ。
独立戦争も南北戦争も権利を勝ち取るための戦いである。僕ら日本人の感覚からすれば、権利を得るために何十万人もの犠牲者を出すというのはピンとこない。生きる権利、働く権利、結婚する権利、幸福を追求する権利…今僕らにはそれらの権利が当たり前のようにあり、与えられたという印象はあっても勝ち取ったという感覚は乏しい。
だから僕も当初、昨今のアメリカのニュースで人種差別問題に対してデモ活動をしている人々を見て、コロナ感染予防をしなくちゃいけない時にどうしてデモ活動なんてやるんだ、今は家でおとなしくした方がいい、危機感がないのかと感じてしまった。でもそうではないのだ。けしてコロナや命を軽視しているわけではなく、ただそれよりももっと大切で重要なことのために彼らは立ち上がっていたのだ。そうやって自由と権利を守ってきた歴史がアメリカにはあるのだ。
もちろん血を流すのがよいことだとは思わない。ただ得たい権利がある時にウジウジ愚痴っているだけでは何も変わらない。多くを語らず様々な思想を容認できるのはおくゆかしい日本人の美徳ではあるけれど、時として団結して立ち上がる姿勢は僕らも学ぶ必要がある。
与えられたものではなく、勝ち取ったものだからこそ、大切にできるものがあるのだ。
(文:福場将太)