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コラム
2013年12月「月刊 孤独マガジン」
「あいつはいつも1人で淋しいヤツだ」「あの人は友達がいなくて孤独だ」なんてよく言うけれど、孤独ってそんなにいけないことだろうか?確かに『孤独』という単語にはどこかマイナスな響きがあるが、『孤高』『単独』と置き換えたっていい、1人でいるということはそんなにいけないことだろうか?
仕事をして活躍もしている女性が結婚もせずにいたりすると「今はいいけど将来淋しいわよ」と哀れむように言う人がいる。飲み会に参加せず家で1人で飲んでいる人を「協調性のないヤツだ」と揶揄する人がいる。でも、果たしてそうだろうか?独身者が既婚者より不幸とは限らない。集団でいるのが1人でいるより充実しているとは限らない。
流行のソーシャルネッットワークサービスの中では『友達』という言葉があまりに簡単に使われていることに激しい違和感をおぼえる。「友達になりませんか」なんて誘いのメールが届き、クリックすれば友達リストに登録される。でもさ、そのリストに載っている人たちは本当に『友達』か?腹を割って話しているか?緊急事態に助けにきてくれるのか?幼い頃に口ずさんだ「友達100人できるかな」という歌詞、あの歌の『友達』はリストに登録する『友達』ではなかったはずだ。
『友達』って大切な言葉じゃないかなあ。他にも『好き』とか『恋人』とかだってとっても大切な言葉、責任が伴う言葉じゃないかと思う。それがネットの世界ではあまりに簡単に使われている。正直なんて安っぽい、薄っぺらいと思ってしまう。「これはあくまでネット世界だけのゲーム用語なんだよ」という認識がちゃんとあればいいのだけど、若い子たちの言動を見ていると実生活における友情や愛情までその薄っぺらい感覚になってしまっているのではないかととても心配になる。友情や愛情なんて1人でたくさん持てるものではないし、コロコロ変わるものではないと思うぞ。個人情報を隠したまま知り合って都合が悪くなったらいつでも縁を切れる…出会いや別れはそんなにお手軽なものではないと思うぞ。リスクや責任の伴わない絆なんてないんだぞ。
休日、暇を持て余している人同士で集まって一緒に遊ぶ。休日、前々から計画していた単身登山に出掛ける。どちらが幸せ?彼氏がいないと耐えられなくて恋愛をくり返していく。最愛の存在を失ってもその想いを生涯貫く。ねえ、どちらが幸せかなあ?
孤独を紛らすツールはたくさんある。でもそもそも孤独は紛らさなくてはいけないものなのだろうか?孤独だからって友達がどうでもいいわけじゃない。独身だからって人を愛していないわけじゃない。むしろ逆かもしれない。1つ1つの友情を大切にしていたらそんなにたくさんの友達は持てない。愛情に真剣だからこそ1人でいる時間も長くなる。そう考えたら孤独が必ずしも不幸でかっこ悪くてかわいそうなものとは限らない。刹那的で上辺だけの重みのないものに囲まれて生きるより、はるかに充実した人生かもしれない。
確かに人は淋しさに弱い。とりあえずでも重みがなくても誰かにそばにいてほしいと思ったりする。でもそうしてもやっぱり淋しさはつのる。今回私が主張しているのは別に淋しさを愛せということではない。客観的に孤独に見えるかどうかは問題じゃないってことだ。1人でいても日々を充実させられるようになった時、その時こそ穴埋めではない友情や愛情、暇潰しではない楽しさや嬉しさに辿り着けるのではないか。
客観的に孤独なことは何も悪くない、かっこ悪くない。むしろ淋しさに負けて重みのない集団に身をおいている人よりよっぽどかっこいい。つい人間は見栄を張って1人じゃないふりをしちゃうけれど、自分を幸せだって見せようとしちゃうけれど、いいじゃない孤独だってさ。重要なのは周囲から幸せなヤツだと思われることじゃない、本当に自分が幸せを感じていることなんだから。
書店やコンビニで「月刊○○マガジン」なんて趣味の雑誌をたくさん見かける。ギター、写真、料理、サッカー、アウトドア、将棋、鉄道、釣り、園芸、俳句…と様々な愛好家のための本が存在する。あるいは主婦、チョイ悪親父、粋なおじいさんなんかをターゲットにした雑誌なんかもある。そう考えると1人でいるのも1つのステータス、1人の休日をどう充実させるか、素敵な1人暮らしなどを特集する「孤独マガジン」なんてのがあってもいいと思う。周囲に対しても自分に対しても淋しさを誤魔化すツールが溢れた時代、孤独でいることもあえていとわない生き方…そこにこそ本物の幸せの鍵が眠っているのかもしれない。
な~んてね、クリスマスに仕事が入っていたりするとこんなことを言いたくなるわけですよ。
メリークリスマス!夜景の見えるレストランで食事する恋人たちだけでなく、その皿を洗う厨房さんにも、お会計をする店員さんにも、店を出た恋人たちを運ぶタクシーの運転手さんにも、その道路の交通整備をしているおっさんにも、その帰りを待つ奥さんにも、そんな両親を楽させてあげたいと頑張っている受験生にも、そして1人誰かを想っている孤独マガジンの愛読者にも…みんなにみんなにメリークリスマス!
(文:福場将太 写真:美唄メンタルアルピニスト)