旧美唄病院コラム

2008年6月(栄養管理室)『病院のごはんが出来るまで(前編)』

 皆さんは病院のごはんについて、どんなイメージがありますか?
 「味が薄くて美味しくない」「病気に合わせて作っているから食べたいものが食べられない」……そんな声が聞こえてきそうです。
 病院で出すお食事は確かに患者様の病気に合わせて作られたものです。でも栄養は満点でもお料理が美味しくないと、食べる楽しみは半減してしまうし、食欲も落ちてしまいます。う〜ん、美味しくて体に合ったごはんはどうやって作ったらいいのでしょうか? 難しい……。ご家庭の奥様たちも同じ悩みを抱えていそうですね。
 そこで今回は、そんな悩みと毎日おつき合いしている病院の厨房、栄養管理室から、ごはんが出来上がるまでの流れをご紹介していこうと思います。

 普段ごはんを作る時には、まず始めにどんなお料理を作ろうか考えると思います。「今日はしっかり食べたいから揚げ物にしよう!」とか。
 病院ではお料理を考える前に、まずは「患者様にあった栄養量は○○キロカロリーで塩分○グラム」のように、病気に合わせた栄養の基準を作ります。これは厚生労働省が5年ごとに出している、『日本人の食事摂取基準』というデータを基にする施設が多いのではないでしょうか。患者様の年齢・性別に合わせて必要な栄養量を計算したり、病気に合わせて調節したりして、お料理を考える土台にします。
 例えば「今日は揚げ物!」と思っても、朝・昼にカロリーの高いファーストフードを食べていたら、エネルギー過剰になってしまいます。しかも、食べようとしている人がカロリー制限の必要な方だったら大変です。そんな時は朝・昼は脂質を控えた料理にして、夕食で油を使えるように献立を工夫します。その根拠になるのがこの基準なのです。

 栄養の基準を作ったら、次はどんな食材を一日どれだけ使えば基準の栄養量を満たせるのかを、表にまとめます。
 もしもある日「1,800キロカロリーでたんぱく質60g、塩分10gの食事を作ってください」と言われたら、よしきた! とすぐ作れるでしょうか。多分、「どんな食材をどれだけ使えばいいの?」と困ってしまうのではないでしょうか。でも基準を満たす量の食材が用意してあって、それを使って料理すればいいよ、と言われたらやりやすいはずです。栄養量を満たす食材の使用量を、過去のデータを参考に、穀類なら何g、肉類なら何g、野菜なら何g、と一つ一つ決めていき、お料理を考える目安にします。

 ここでやっとどんなお料理を作るか考えます。ふ〜長かった。使う食材の量や栄養の基準に注意しながら、献立をたてていきます。
 同じような料理が続いてないかな? 料理の組み合わせは変じゃないかな? 季節に合った食材を使っているかな? 患者様の好みに合ったものを出せているかな? ……等々、いろんなことに注意しながらお料理を組み合わせていくのです。

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