旧美唄病院コラム

2008年4月(薬局)『簡易懸濁法』

 薬局では薬に関してさまざまな質問や相談を受けることがあります。ここではよく聞かれる内容について紹介させて頂こうと思います。すぐに使える内容ではないかもしれませんが、何かの折に思い出してお役に立てれば幸いです。

Q:寝たきりの祖父を自宅で世話している。錠剤を飲もうとすると喉につかえてしまうので潰して飲ませている。手間が掛かるので何かいい方法がないか探しているが、そちらの病院ではどうしているのか?

A:物を飲み込む力が低下して錠剤、カプセルの服用が難しくなることがあります。 以前からよく行われているのは、薬を砕き、粉状にして飲む方法です。薬局で調剤する際に、あらかじめ粉状にしてお渡しすることも多いです。ただしこの方法ですと準備に時間が掛かったり、潰してから日が経つと光や温度や湿気などによってお薬の効果が落ちることもあります。

 最近ではより確実に手早く服用する方法として、簡易懸濁法という方法が考えられました。錠剤やカプセルを、そのまま50〜60℃の温湯で溶かして服用する方法です。飲み込む力の低下した患者様、また経管チューブを使われている患者様にも適しています。

 当院では、経管チューブからお薬を服用されている患者様はこの方法で対応しています。簡単ではありますが、下記にて投与方法を紹介したいと思います。経腸チューブからの服用のためシリンジを使用した方法を紹介しますが、カップ等の容器の中で溶かして服用することも可能です。

簡易懸濁法PH11. お薬、約55℃の温湯、小さな容器(30ml程入る大きさで可能)、経管チューブ用シリンジ(シリンジは無くても実施可能)を用意します。

2. お薬をシリンジに入れます。


簡易懸濁法PH23. カップに入れた約55℃の温湯を約20ml程シリンジに吸い取ります。


4. シリンジに蓋をして振り混ぜ、10分間放置します。

5. 懸濁状況を確認してから服用して下さい。経管チューブを使われている患者様はシリンジをチューブの先端に取り付けて注入します。

※55℃、10分で溶かす理由
カプセルは『水50mlを加え、37±2℃に保ちながらしばしば揺り動かすとき、10分以内に溶ける』と決められています。室温で10分放置しても37℃以下にならない、また高温にしすぎてお薬の成分に影響を与えないように最初の温度を55℃にしています。電子ポットに温度調節機能で60℃に設定できるものもあるので、これを使う方法もあります。

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