デイケア活動日誌

2020年12月『漂流デイケア』

 デイケアとは集団療法である。人は人によって傷付くけれど人によって癒される、ふれあいの中で学び合える。メンバーとスタッフが共に活動し共に食事を囲むことで、心にもたらされる治療効果は非常に大きい。

 しかしコロナの感染対策という意味では集団はリスクである。心の健康、体の健康。いずれを優先するか、今年のデイケアはその葛藤が常につきまとった。
 例えば緊急事態宣言の頃は一時的にデイケア自体を中止した。解除後も、まずは少人数からの受け入れとしたり、ミーティングのプログラムはやめたりと試行錯誤が続いた。外出プログラムも、行き先やタイミングの調整が必須。人気のボウリング大会もやむなく中止する場合もあった。今月のクリスマス会も昨年のようにみんなで合唱とはいかないので、慎ましくゲームやビンゴに興じた。

 これはもちろん当クリニックに限定しての話ではない。戦後、精神科にデイケアという治療が始まって以降、ここまでの世界的流行をきたした感染症はなかった。つまりこのような情勢下において、どんなプログラムをすればいいのかというノウハウも、デイケア中止や続行を判断する基準も何もないのだ。まさに今年のデイケアは寄る辺のない海を漂流していたようなもの。

 換気、体温チェックに手指消毒、マスク着用にソーシャルディスタンス。そんなデイケアにも慣れてきた。本当はどんどん新しいプログラムや新しいメンバーを迎えていきたいが、その力加減が今なお難しい。
 それでも判断していくしかない。前例がない以上、全てが例外で当たり前だ。間違ったらそこから学ぶしかない。ノウハウは模索の中から生み出し、基準は実証の中から作り出すしかないのだ。

 人と直接ふれあわなくても生活できるツールが増えてきているが、デイケアだけはさすがにオンラインというわけにはいかないだろう。まずは不安な情勢の中でもデイケアに通ってくれた患者さんたち、プログラムの試行錯誤を続けてくれたスタッフたちに心から感謝を伝えたい。

(文:福場将太)

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