コラム

コラム2015年09月「2015年学びの旅 ~サイコオンコロジー学会in広島~」

 久しぶりに学会に出席しました。サイコオンコロジーには以前から興味を持っていたのですが、今年は故郷の広島で学会があることを理事長先生から教えて頂き、せっかくなので行ってきました。

 サイコオンコロジーという学問をみなさんはご存知でしょうか。日本語では「精神腫瘍学」という言葉が当てられています。癌を抱えた患者さんやその家族の心に寄り添う医学…と言葉で言うのは簡単ですが、その奥深さと難しさ、そして必要さを今回の学会で思い知らされました。
 癌を抱えた患者さんの精神・神経症状に対応するには専門の知識が不可欠であることをまず痛感しました。そして緩和ケアをやっている病院に必ず精神科医がいるわけではないという現状。普段の精神科病棟や外来、往診する家や施設だけではなく、強く心の治療者を必要としてくれる患者さんとスタッフがそこにいることを知りました。

 さらに印象に残ったのはある先生のお言葉。「精神の病気なら治せるけど、死を前にした患者さんの苦悩に対してはこれまで学んできた医学・看護学・薬学では役に立たない」。そうですよね、生きたいのに生きられない絶望、愛する人を失った悲しみには精神医学では届かない。薬では刃が立たない。その先生はおっしゃいました、「サイコオンコロジーは、患者さんやご遺族の心の成長を支援する医療でもある」と。
 今年は戦後70年ということもあり、学会の中で平和都市ヒロシマについての講演もありました。最初目録を見た時はどうして医学の学会にこのテーマが入っているのか不思議でしたが、拝聴して納得。生きることと死ぬことについて学ぶ、それがサイコオンコロジーなのだと思います。

 生まれた地・広島での学会に参加し、背筋が正された気持ちです。まだ百分の一もわかっていないでしょうけど、精神科医としてサイコオンコロジーに対して「学んでみたい」という気持ちを呼び起こされました。
 なんと来年は札幌で開催されるとのこと。こういう時は神様が背中を押してくれているような気がします。それに出席する時には、今回より少しでも知識を身につけておきたいと思います。

(文:福場将太)

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