すずらん広報倶楽部

すずらん広報倶楽部2014年12月 突撃取材26年度第2回『「病院の顔」安田院長を突撃取材』

■今回の登場人物
安田院長を突撃取材
安田 素次(やすだ もとじ)院長

平成25年5月より当院院長に着任。業務はもとよりイベントなどにも前向きに取り組む姿勢に信奉者多数。当取材にも積極的に対応していただきました(ありがとうございます!)。

■今回の取材記者
安田院長を突撃取材
今川 菜美子(いまがわ なみこ)

笑顔が素敵な3階病棟課長。目立ちたがりなだけの本間記者(産休中)、そもそも予定通りに現れない本條記者に代わる「確実に計算できる戦力」として広報倶楽部に新規加入した。『私が広報倶楽部に…。あっ、そうなんですね…。』

 
安田院長を突撃取材
山平 貴意(やまひら たかおき)

リハビリテーション課主任。日常のあらゆる出来事をHPの「つぶやき」に転化しようとしている。『取材っていうのは…初めてなんですけど大丈夫ですかね〜。』

安田院長を突撃取材
加藤 二郎(かとう じろう)

経営戦略部長(部下なし)。オーダリングシステム導入関連業務の影響でここ数か月さぼっていたが、そろそろ広報倶楽部の活動も再開しようと考えている。『この取材は年度初めにたてた目標の一つ。何としても年内に実施したいと思っていたのです。』

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加藤:久々の突撃取材、今回は当院院長の安田先生にお時間をいただいております。HPのアクセス数で『医師紹介』の項目は毎月上位に入ります。それだけ「江別すずらん病院にはどのようなお医者さんがいるのか?」ということに関心を持たれている方が多いのだと思います。そこで今回は、「安田院長先生への取材を通じて当院について知ってもらう」事を目的にこのような企画を設けさせていただきました。

安田院長を突撃取材

【HPアクセス状況】
トップページ、診療案内に続くアクセス数となっております。

院長:分かりました。

加藤:まずはじめに…先生が当院に着任されて2年ほどが経過しようとしています。着任後に感じられたことについて印象などお聞かせください。

院長:外来には90歳以上の方もおり、高齢の患者さんが多いというのが率直な印象です。当院に着任する以前は、静療院※1で認知症の専門外来をしておりましたが、せいぜい80歳代前半くらいまでの患者さんを診察していた印象があり、着任以後、超高齢化社会というのを改めて実感しています。

山平:比較的元気な方が多いのでしょうか?それとも認知症が進んだ方が多いのでしょうか?

院長:最近は鑑別診断※2で来る患者が多いですが、うつ病などの症状を呈している場合も数多くあります。また、物盗られ妄想、嫉妬妄想※3などの患者さんは静療院で論文のテーマにしましたが、数としてはこちらでも変わりません。札幌市内でも郊外でもそのような患者さんは数多くいるということだと思います。

※1.静療院
現在の札幌市児童心療センター。安田院長は当院着任前、この前身である市立札幌病院 静療院で院長をなさっていました。
※2.鑑別診断
患者さんの所見・症状がどのような疾患に由来するのかを見極めようとする診断を言います。当院は「認知症疾患医療センター」に認定されていることもあり、認知症の鑑別診断を希望する患者さんが多くいらっしゃいます。
※3.物盗られ妄想、嫉妬妄想
いずれも認知症患者さんで表出することが多く、例えば物盗られ妄想であれば、財布の置き場所を忘れたにもかかわらず「財布を盗まれた」と主張するような症状を言います。安田院長は札幌市医師会医学会で「高齢者の妄想」を主題とした発表を毎年行い、札幌市医師会賞も受賞されています。
安田院長を突撃取材

【取材の風景】
いつになくまじめなテーマで会話が進んでいきます。筆者の真剣度も今年最高潮です。緊張して目をつぶってしまっている記者もいますね。

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今川:皆、興味があると思うのですが…そもそも医師を目指したきっかけって何かあったのでしょうか?

院長:精神科医が一番「人間ウォッチング」をできる職業だと感じ興味を持ったことです。私はもともとは大阪外語大でロシア文学を専攻※4し、卒業論文ではチェーホフの作品論をテーマとしましたが、そのチェーホフが精神科医だったこともあり、精神科医を追体験してみたいという思いが強くなりました。そして、「人間ウォッチング」をしながら、モーパッサンや川端康成など他の作家の短編作品とチェーホフのそれとを比較し、精神科医の作品がどのように違っているのかを経験してみたいと感じました。

今川:そんな先生は、外語大時代はどのような学生さんだったのですか?

院長:一言でいうと引きこもりでした(笑)。その頃はちょうど学生紛争の時代だったので、読書したりして過ごすのに良かったのです。

今川:学業は…やはり優秀でいらしたのでしょうか?

院長:当時住んでいるアパートには中国語学科の学生もいましたが、ある日、大家さんから「中国語の発音練習の声は聞こえてくるがロシア語は一向に聞こえてこない。勉強しなくて大丈夫なのか?」と言われたことがあるような状況でした。そんな状況だったので、卒業前の実習では私だけが突出して課題ができず、正直留年しそうになりました。

山平:それは…意外ですね。

院長:そんな折、「北大医学部でロシア文学を専攻したいから医学部に入りなおしたい」と言ったところ、「それは面白い」ということで何とか卒業できました。そうして医学部に入りなおしましたが…チェーホフの追体験はまだまだこれからの課題です。

山平:ということは…医学部に入られてからは最初から精神科を志望されていたのですか?

院長:精神科以外考えていませんでした。先ほど言ったように人間ウォッチングに最も適しているという思いもありましたので。

※4.大阪外語大学ロシア語学科
現在の大阪大学外国語学部です。安田院長は医学部に入学する前に同大学を卒業されております。
※アントン・チェーホフ(露・1860~1904)
ロシアを代表する劇作家であり短編小説家で、短編小説により19世紀末にロシア文学の流れに革命を起こしたと言われている。
※ギ・ド・モーパッサン(仏・1850~1893)
フランスの自然主義の作家、劇作家、詩人で、短編を中心に多くの作品を残し、20世紀初期の日本の作家にも影響を与えた。
※川端 康成(日・1899~1972)
「伊豆の踊子」などで知られる、言わずと知れた日本を代表する小説家で、1968年にはノーベル文学賞を日本人で初めて受賞した。

山平:私たちからすると意外な形で医学部に入られたのですね…。そんな先生は大学に入る前はどのような少年だったのですか?

院長:少年時代は昆虫採集など一人の世界に没頭できるものが好きでした。高校時代は数学などが好きで、論理的な世界に憧れていたように思います。結局その時その時で好きなことに没頭した結果、今に至る…という具合です。

加藤:世の母親たちも興味のあるところだと思いますが…最終的に医学部に入られるくらいなので親は厳しかったのですか?

院長:親に「勉強しろ」と言われたことはなかったように思います。有難いことにそういうことは全く言わない、ルーズな親でした。

加藤:そうしますと、勉強にもかなり没頭されていた訳ですか?

院長:自分が興味あることをやるのは好きだったのですが、正直授業は好きではありませんでした。

加藤:そうなんですか…。

山平:高校時代は数学に没頭されてということですが…そこから何故に外語大だったのでしょうか?

院長:当初、人と接するのはどちらかというと苦手で理学部に行こうと思っていましたが、京都大学の受験を失敗してしまい…結果として外語大に入学することとなりました。しかし外語大には商社マンを養成するような面があり、そもそも私には合っていなかったというのも引きこもりにつながる原因だったかも知れません。

安田院長を突撃取材

【いつぞやのクリスマス会での記者と筆者の勇士】
こんなことをやっている私たちとは…やはり頭の出来が違うようです。

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今川:先生は趣味もいろいろあると伺ったことがあります。現在でも続けていらっしゃるのですか?

院長:今やっているのはテニスくらいです。学生時代にはあこがれのまなざしで見ているだけでしたが、ちょうど60歳から始めました。腕前は…今でも初級なので学生時代に始めなくてよかったです。60歳から始めたのなら初級のままでもなんとかごまかせますから(笑)。

今川:卓球大会※5でのイメージがあるのでもっと昔からなさっているのかと思っていました。昔は他にも何かなさっていたのですか?

院長:学生時代から気心知れた数名のメンバーで山登りをしていました。北海道の主だったところでは日高と裏大雪以外は大体登りましたが、首を痛めてしまい今はやっていません。

今川:「合同ハイキング」という言葉を先生に教えていただいたことがあります。女性の方と一緒に登ったこともあるのですか?

院長:女子医学生と一緒に登ったことがあります(笑)。今でいう合コンの発祥といえるかもしれません。

今川:もしかして奥様とも…。

院長:家内とも登りました。家内とは北大時代に知り合いましたが…紅葉の季節の空沼岳に登り、大通公園でプロポーズしました。

今川:素敵ですね!

院長:その時は穏やかで素直で優しい女性だと思って結婚しましたが…いろいろあり…今では土日は私が家事をしています(笑)。

※5.卓球大会
当院で年2回実施されている(といっても今年度からですが…)職員の院内行事です。詳しくはコラムをご確認ください。

安田院長を突撃取材安田院長を突撃取材
【日高山脈(左)と大雪山系(右)】
大雪山系のうち、大まかに言うと南東の山々を「裏大雪」というらしいです。

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山平:仕事の話に戻るのですが、今後当院はどのような形で地域医療に貢献していくことになるのでしょうか?

院長:私自身としては、高齢者の精神科医療を担っていく思いでいます。自殺企図※6や介護者のメンタルヘルス、あとは…私もひきこもりだったのでひきこもりの患者さんも診ていこうと思っています。認知症ばかりがクローズアップされていて確かにそれはそれで大切ではありますが、「高齢者のメンタルヘルス」という考え方で対応していきたいと思います。

山平:我が国の人口ピラミッドなどを見ていると、今後いわゆる「団塊の世代」の引退もあり、高齢者のメンタルヘルスについての話題はもっと増えてくることと思います。

院長:その時々の需要に合わせ、いろいろなサービスがあるというのが良いのではないかと思います。特に男性は定年退職後に何をしていいか分からない人も多く、孤立しがちです。そういった方々に対して、例えば「個別性」を考慮したデイ・ケアのプログラムを作っていくというのも良いですね。いずれにしても、今後は「高齢者のメンタルヘルス」というテーマで認知症をはじめとした患者さんの治療をしていきたいと思います。

記者:ありがとうございました!

※6.自殺企図
「じさつきと」読み、自殺しようとすることを言います。安田院長は精神科医師2年目に自殺企図の患者さんに出会い診療をしたのがこれまでの医師生活で一番印象に残っていることの一つだそうです。その後、自殺企図を自身の研究テーマとするようになり、「精神分裂病者の自殺企図について」(精神神経学雑誌94巻2号)といった論文発表や北大医学部での「自殺学」講義の担当にも携わってこられました。

(文・写真:すずらん広報倶楽部)

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