デイケア活動日誌

2013年04月『いざという時の応急処置教室』

 2013年4月20日土曜日、いつもならギターで合唱の日なのですが今月はお休み。代わりにみんなで応急処置の勉強をしました。デイケアを利用されているみなさんの中には1人暮らしの方も多いので、病気や怪我に自分で対処する知識はとても大切です。

 プログラムの前半は日常の中で起こりやすい症状への応急処置の勉強。クイズ形式でドクターが問題を出し、みなさんに答えを考えてもらいました。例えばこんな問題です。

<問題> ドアに顔をぶつけて鼻血が出た。正しい応急処置はどれ?
①鼻の付け根を押さえてじっと横になる。
②上を向いて首の後ろをトントン叩く。
③下を向いて鼻の穴にティッシュをつめる。

 …いかがでしょうか?横になったり上を向いたりすると血液が喉に流れて気分が悪くなることがあります。また鼻の付け根には骨があるので押さえても効果がありません。というわけで正解は③ですね。通常この方法で数分待てば鼻血は止まります。止まらない人、頻繁に鼻血が出る人は検査が必要です。それにしても昔から言われる「首の後ろをトントン叩く」…どうしてこんな迷信が生まれたのでしょう。少なくとも今のところ首トントンが鼻血を止めるという医学的根拠はありません。
 その他にもつき指、やけど、骨折などの応急処置を勉強しました。

 プログラムの後半はもし家族や友人に緊急事態が発生した場合の対処法を勉強しました。これは誰にとっても他人事ではありません。

<問題> 夜友人の家に遊びに行くと、友人が脱衣所で裸で倒れていた。うまくしゃべることができず、体もうまく動かない様子。「苦しい、苦しい」と言っている。この時の間違った応急処置はどれ?
①急いで救急車を呼ぶ。
②水を飲ませて落ち着かせる。
③肩を貸して立ち上がらせベッドに移動させる。
④毛布で身体をくるむ。
⑤「大丈夫だよ、落ち着いて」と言葉をかける。

 …少し難しい問題です。症状としては脳梗塞を想定しておりますが、それがわからなくても普段元気な友人がしゃべったり動いたりできず苦しんでいるわけですから救急車を呼ぶべき状況と言えます。よって①は正しい。意外にやってしまうのが②なのですが、脳梗塞では身体の麻痺が起こります。この問題でもしゃべったり動いたりが難しくなっています。この状態では水を上手に飲み込むことも難しいですから、水を飲ませることは大変危険です。脳の血管が詰まった上体でむせこんで身体に負担がかかると脳出血の危険があります。よって②は誤り。同じく身体に負担をかけてしまう③も誤りです。脳梗塞は脱衣所など寒いところで起こりやすく、この問題でも友人は裸です。体温が失われるのは危険ですから、救急車が来るまで毛布やバスタオルで保温してあげましょう。よって④は正しい。まあ⑤は精神科医として付け加えてしまった項目ですが、友人を安心させてあげることも大切だと思います。よって⑤も正しい。以上、脳梗塞の応急処置としてやってはいけないのは②③でした。特に日本では「苦しい時にはとにかく水を」という習慣がありますが、脳の病気でなく心臓や呼吸器の急な病気でも水を飲ませることはむしろ危険だと言われています。

 プログラムの最後は救急車の呼び方の練習をしました。いざという時、119番に電話しても気持ちが混乱してうまく状態が伝えられないことが多いです。誰に、いつから、どんな症状が起こっているのかを落ち着いて伝えましょう。そして電話をかけている自分が誰なのか、救急車に来てほしい場所はどこなのかをしっかり伝えることが大切です。実際に『デイケア中に看護師が突然倒れて精神保健福祉士が電話で救急車を呼ぶ』、という設定でロールプレイもしてみました。やってみると意外に難しいものです。倒れた人以外に複数の人間がいる場合は、誰か近くの道まで出て救急車を誘導してあげるのもスムーズに到着するためにとても有効です。

 とまあ結構たくさんの内容を詰め込んだプログラムでした。みなさん結構お疲れだったと思います。今回学んだことがいつか少しでも役立つことがあればいいなと思います。

(文:福場将太 写真:フカヤムチャ)

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