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コラム2024年12月「微笑み方改革」
『働き方改革』と叫ばれながら過ごした2024年。過労にならない健康な働き方をするのは良いこと。しかし、実際にこの改革によってそれはもたらされただろうか。
医療はいくらでも上を目指せる仕事、患者さんのためにもっともっととやっていたらきりがないので、真面目で一生懸命な職員ほど過労に陥るリスクが高い。自分の健康を守るためには、ほどほどで退勤する潔さが必要である。しかし、どうしてもここだけは譲れない、ここで手を抜いたら一生後悔する、という場面でも退勤しろとなってしまうと本末転倒、ストレスが溜まって余計に不健康だ。
2003年から2004年にかけて放映されたテレビドラマ『白い巨塔』で登場する里見助教授は、抗癌剤の研究のために毎日夜遅くまで病院に残り、担当の入院患者に異変が起きていたら病院に泊まり込み、休日でもしょっちゅう病院に顔を出す。そんな姿が理想の医師として描かれ、視聴者からも絶大な支持を得たわけだが、勤務時間を見れば過労も甚だしい。
でもどうなのだろう。里見先生はそれがストレスだったのだろうか。もし先生が「どうして俺がこんなことしなくちゃいけないんだ」「自分ばっかり大変だ」と愚痴っていたり、「みんな先に帰りやがって」「あいつが仕事をしないせいで俺がする羽目に」なんて文句を言ったりしておられたのなら、それはまさしく過労であり、働き方を見直すべきだ。そんな気持ちで治療される患者さんだって迷惑だ。しかし先生はいつも穏やかで、腹を立てるのは医師としての信念に反することが起こった時だけ。働き方については嘆くことも誰かを批判することも全くなく、自分がそうしたくてそうされている。まあ奥さんは怒っていたけど。
望んでしている心が満たされる残業と、嫌々させられている心が擦り減る残業。働き方改革で難しいのは両者を客観的に見分ける術がなく、時間という一番わかりやすい尺度で線を引くしかないことだ。しかもそれを管理するタイムカードはいくらでもアリバイ工作が可能。責任感・使命感の強い職員はこっそり隠れて仕事をする…なんてことになれば、禁酒法時代にお酒を密造するのと同じ、結果的に悲劇は止まらない。
憲法で示されているのは勤労の権利と義務。勤労とは自ら仕事に励むこと。タイムカードでがんじがらめにされると、仮に過労は防げたとしても勤労を妨げてしまい、結局はストレスが増加する。最も大切なのは、ちゃんと笑って、のびのびと働くことではないか。
まずは皆様、一年間お疲れ様でした。
働き方だけでなく、休み方、遊び方、そして微笑み方も忘れずに!
(文:福場将太)